介護施設の初期費用と月額費用
介護施設を選ぶ際、費用面は多くの方が直面する重要な問題です。「親を良い環境で過ごさせたい」という思いと「家計への負担」のバランスに悩まれる方も少なくありません。介護施設にはどのような費用がかかり、どのように準備すべきなのでしょうか。
介護施設費用の全体像
介護施設の費用は大きく分けて「初期費用」と「月額費用」に分類されます。令和5年の全国調査によると、特別養護老人ホームの平均月額費用は約10〜15万円、有料老人ホームでは15〜25万円程度となっています。しかし、施設タイプや地域によって大きな差があるため、具体的な検討が必要です。
初期費用(入居時にかかる費用)

初期費用の中心となるのが「入居金」(入居一時金)です。これは主に有料老人ホームで発生する費用で、0円〜数千万円まで施設によって大きく異なります。
- 入居金:家賃の前払い的性質を持ち、入居権利金の意味合いもあります
- 敷金:家賃の数ヶ月分が一般的で、退去時に返還されることが多いです
- 事務手数料:5〜10万円程度が相場です
特に注意したいのは、介護付き有料老人ホームの入居金は地域によって大きく異なり、首都圏では平均1,000万円以上、地方では数百万円程度という調査結果もあります。一方、特別養護老人ホームや介護老人保健施設では、入居金が不要か少額のケースが多いです。
月額費用の内訳
月々の負担は以下の要素で構成されています:
- 居住費:部屋代(個室・相部屋で大きく異なります)
- 食費:1日3食の提供費用
- 介護サービス費:介護保険適用後の自己負担分
- 管理費:共用部分の維持管理費用
これらに加えて、おむつ代や理美容費、レクリエーション費などの追加費用も発生します。介護度や所得に応じた減額制度もありますので、事前に確認することが重要です。
介護施設の種類と費用体系の基本知識
介護施設の種類による費用構造の違い
介護施設は大きく分けて3つのタイプがあり、それぞれ費用体系が異なります。施設選びの際には、この違いを理解することが重要です。

特別養護老人ホーム(特養)は、入居時の初期費用が比較的低く設定されています。厚生労働省の調査によると、平均10〜30万円程度で、入居金という形での高額な一時金はありません。月額費用は介護度や所得に応じて変動し、住居費・食費・介護サービス費を合わせて月額10〜15万円程度となります。
介護付き有料老人ホームは民間運営が主流で、入居金(前払い金)と月額費用の2パターンの料金体系があります。入居金は0円〜1,000万円超と幅広く、月額費用は15〜30万円程度です。都市部と地方では大きな価格差があり、東京都内では月額25万円以上が一般的です。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、賃貸契約に基づく住宅で、敷金・礼金などの初期費用が発生し、家賃・共益費・生活支援サービス費などの月額費用が必要です。介護サービスは別途契約となり追加費用が発生します。
見落としがちな追加費用の実態
基本料金以外にも様々な追加費用が発生することを念頭に置く必要があります。全国老人福祉施設協議会の調査では、入居者の約70%が何らかの追加費用を支払っていることが明らかになっています。
主な追加費用には以下のものがあります:
- おむつ代(月5,000〜15,000円)
- 理美容サービス(1回2,000〜5,000円)
- レクリエーション費(月3,000〜10,000円)
- 医療費の自己負担分
- 日用品費
施設見学時には基本料金だけでなく、これらの追加費用についても詳細に確認することが、将来的な家計の見通しを立てる上で非常に重要です。
初期費用の内訳と相場〜入居金・敷金・前払金の違い
介護施設に入居する際には、さまざまな初期費用が必要になります。これらの費用は施設によって名称や金額が異なり、混乱しがちな部分です。ここでは、主な初期費用の種類と相場、そして支払い方法について解説します。
主な初期費用の種類

介護施設の初期費用は主に以下の3種類に分類されます:
– 入居一時金(入居金):有料老人ホームなどで多く見られる費用で、入居権を得るための金額です
– 敷金:賃貸契約と同様の性質を持ち、退去時に原状回復費などを差し引いて返還されるもの
– 前払金:将来の家賃や管理費の一部を前払いする形で支払う金額
初期費用の相場
初期費用の相場は施設の種類や立地によって大きく異なります。
– 特別養護老人ホーム:0〜30万円程度(敷金や保証金が中心)
– 介護付き有料老人ホーム:0〜2,000万円(都市部の高級施設では高額になることも)
– サービス付き高齢者向け住宅:0〜200万円程度(敷金が中心で、家賃の2〜3ヶ月分が一般的)
– グループホーム:0〜50万円程度(敷金が主)
東京都の調査によると、有料老人ホームの入居一時金の平均は約300万円ですが、都心の高級施設では1,000万円を超えることも珍しくありません。一方、地方では無料〜100万円程度の施設も多くあります。
初期費用と月額費用の関係性
多くの施設では「初期費用が高い施設は月額費用が安い」、「初期費用が無料の施設は月額費用が高い」という傾向があります。例えば:

– 入居一時金1,000万円の施設:月額15万円程度
– 入居一時金なしの施設:月額25万円程度
このため、長期入居を検討する場合は、初期費用と月額費用の総額(トータルコスト)で比較することが重要です。一般的に3〜5年を境に、どちらが経済的かが分かれます。
初期費用の返還制度について
2018年の法改正により、有料老人ホームの入居一時金には返還ルールが設けられています。入居後3ヶ月以内に退去する場合、日割り計算で返還される「初期償却」の仕組みが義務付けられました。施設選びの際は、この返還条件も重要な確認ポイントです。
月額費用の構成要素と施設タイプ別の費用比較
施設タイプ別の月額費用内訳
介護施設の月額費用は、大きく「居住費」「食費」「介護サービス費」「管理費」の4つに分類されます。施設タイプによって、これらの費用バランスは大きく異なります。
特別養護老人ホーム(特養)の場合、月額費用は約10〜15万円程度。介護保険の適用範囲が広いため、自己負担額が比較的抑えられています。居住費は多床室で約1万円、個室でも2.5万円程度と低めです。食費は約4.2万円、介護サービス費の自己負担は1〜3割(約1.5〜4.5万円)となっています。
有料老人ホームは月額20〜35万円が一般的です。居住費(家賃相当)が約8〜15万円と高めで、食費約5万円、介護サービス費約3〜8万円に加え、管理費として約3〜5万円が必要です。特に都市部の高級施設では月額40万円を超えるケースも珍しくありません。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は基本料金が約15〜25万円。居住費約7〜12万円、食費約4.5万円、生活支援サービス費約3〜5万円が一般的です。ただし介護が必要になると、別途介護保険サービスの利用料(約2〜8万円)が加算されます。
地域差と追加費用に注意

厚生労働省の調査によれば、同じ施設タイプでも地域による月額費用の差は約20%に及びます。東京や大阪などの都市部では地方に比べて平均5〜8万円高くなる傾向があります。
また、基本月額費用以外に見落としがちな追加費用があります。おむつ代(月約1万円)、理美容費(1回約2,000〜5,000円)、レクリエーション費(月約3,000〜1万円)、医療費の自己負担分などが発生します。
施設見学時には基本月額費用だけでなく、これらの追加費用についても詳細に確認し、実質的な月々の負担総額を把握することが重要です。費用の透明性が高く、追加費用の説明が丁寧な施設を選ぶことをおすすめします。
見落としがちな追加費用と隠れたコスト
見えないコストに注意!追加費用の実態
介護施設の契約時に説明される基本料金だけでなく、実際に入居してから発生する「隠れたコスト」が家計を圧迫することがあります。国民生活センターの調査によると、入居者の約65%が想定外の費用発生を経験しているというデータもあります。
よくある追加費用の例
- 医療関連費用:通院付き添い費用(1回3,000〜5,000円)、薬の受け取り代行(1回1,000円程度)
- 日用品費:おむつ代(月額15,000〜30,000円)、衛生用品費(月額5,000〜10,000円)
- 生活サービス費:理美容サービス(1回2,000〜5,000円)、買い物代行(1回500〜1,000円)
- イベント参加費:季節行事や外出イベント(1回1,000〜3,000円)
- クリーニング費用:特殊清掃や定期クリーニング(月額3,000〜8,000円)
東京都内の特別養護老人ホームに母親を入居させた佐藤さん(58歳)は「基本料金は月10万円程度でしたが、実際には追加費用で毎月5万円近く余分にかかっていました」と語ります。
契約前に確認すべきポイント
追加費用による家計への影響を最小限に抑えるため、入居前に以下の点を確認しましょう:
- 「全て込み」と説明されるサービスの具体的内容と範囲
- 介護度が上がった場合の追加費用の発生有無
- 退去時の原状回復費用の負担範囲
- 看取り期の医療ケア追加費用
- 契約書の細則や別紙に記載された特記事項
厚生労働省の指針では、介護施設は費用の内訳を明確に説明する義務がありますが、質問しないと詳細を教えてもらえないケースも少なくありません。「ここに書いてあります」と言われても、必ず実際の金額と頻度を具体的に確認しましょう。
介護施設選びは初期費用と月額費用だけでなく、これらの隠れたコストも含めた「実質負担額」で比較検討することが、将来の家計を守るための重要なポイントです。
コメント