介護食・嚥下食の調理器具
介護食づくりの負担を軽減する!便利な調理器具と選び方
親の食事介助が必要になった時、最初に直面するのが「何を食べさせればいいのか」という悩みです。介護食づくりは時間と労力がかかりますが、適切な調理器具があれば大幅に負担を軽減できます。厚生労働省の調査によると、在宅介護者の約65%が「食事の準備」に負担を感じているというデータもあります。このセクションでは、介護食・嚥下食づくりに役立つ調理器具をご紹介します。
介護食づくりの基本となる必須アイテム

介護食づくりの基本となるのは、食材を簡単に細かくできる調理器具です。特に以下の3つは介護食調理の強い味方になります。
1. フードプロセッサー:様々な硬さの食材を短時間で細かくできる万能選手です。肉類や野菜を均一に刻むことができ、複数の刃を使い分けることで食感の調整も可能です。介護食レベル3〜4(※)に対応した調理に最適です。
2. ハンドブレンダー:鍋やボウルに直接入れて使えるため、調理途中の食材をその場でペースト状にできます。洗い物が少なく済むのも大きなメリットです。スープやシチューなどの液状の料理に特に便利です。
3. ミキサー:完全なペースト状の食事(介護食レベル1〜2)を作るのに適しています。水分と食材を一緒に撹拌するため、なめらかな仕上がりになります。
とろみづけに役立つ補助アイテム
嚥下機能が低下している方には、食事にとろみをつけることが誤嚥防止に効果的です。以下のアイテムが役立ちます。
– とろみ剤専用メジャー:とろみ剤を正確に計量できるため、安定した粘度の食事を提供できます。
– シリコン製の調理器具:こびりつきが少なく、とろみのついた料理も取り出しやすいです。
– 裏ごし器(こし網):食材の繊維や固形物を取り除き、なめらかな舌触りの食事を作るのに適しています。

※介護食レベル:日本介護食品協議会による「ユニバーサルデザインフード」の区分で、かたさや粘度によって1〜4段階に分類されています。
介護食・嚥下食が必要になる状況と基本知識
嚥下機能の変化と介護食の必要性
加齢や疾患により嚥下(えんげ)機能が低下すると、通常の食事が難しくなります。厚生労働省の調査によれば、65歳以上の高齢者の約13%が嚥下障害を抱えているとされています。特に脳卒中後や認知症の進行に伴い、この割合は大きく上昇します。
嚥下障害がある方が普通食を摂取すると、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。実際、75歳以上の肺炎による入院の約7割が誤嚥性肺炎だというデータもあります。このような状況で、介護食・嚥下食は単なる「食べやすい食事」ではなく、健康維持と命を守るための重要な役割を担っています。
介護食の種類と区分
介護食は大きく以下のように区分されています:
- 嚥下調整食(学会分類2013):日本摂食嚥下リハビリテーション学会による0j〜4までの段階分け
- ユニバーサルデザインフード:かたさを区分1(容易にかめる)〜区分4(かまなくてよい)に分類
- スマイルケア食:農林水産省が推進する介護食品の選択の目安
佐藤さん(52歳)の事例では、脳梗塞から回復期の父親(83歳)に対し、最初は「嚥下調整食3(舌でつぶせる軟らかさ)」から始め、リハビリの進行に合わせて段階的に食形態を上げていくことで、6ヶ月後には「嚥下調整食4(かまなくてよい)」まで改善しました。この過程で、フードプロセッサーやミキサーを活用し、とろみ剤で適切な粘度に調整することが重要でした。
介護食・嚥下食が必要なサイン
以下のような症状が見られたら、介護食への移行を検討すべき時期かもしれません:
- 食事中にむせる頻度が増えた
- 食べこぼしが多くなった
- 食事に時間がかかるようになった(30分以上)
- 食後に声がかすれる、または湿った声になる
- 食後に発熱することが増えた
これらの症状がある場合は、早めに医師や言語聴覚士、管理栄養士などの専門家に相談することをお勧めします。適切な食形態の選択は、誤嚥性肺炎の予防だけでなく、食事の楽しみを維持することにもつながります。
必須の調理器具:フードプロセッサーの選び方と活用法
フードプロセッサー選びの重要ポイント
介護食・嚥下食作りの効率を大幅に向上させる最も重要な調理器具は、間違いなくフードプロセッサーです。日本介護食品協議会の調査によれば、在宅介護者の78%が「フードプロセッサーが介護食作りの負担を軽減した」と回答しています。しかし、機種選びを誤ると逆に調理の手間が増えることも。

選ぶ際は以下の4点を必ずチェックしましょう:
– 容量:1〜2人分なら300〜400ml、家族分も作るなら500ml以上
– パワー:200W以上が望ましい(特に肉類の処理に必要)
– 刃の種類:みじん切り用と粗挽き用の2種類以上あると便利
– 洗いやすさ:分解可能で食洗機対応のものが時間節約に
介護レベル別の活用法
介護食は嚥下(えんげ)機能に合わせて段階的に調整します。フードプロセッサーは各段階で異なる使い方ができます:
レベル3(舌でつぶせる軟らかさ):
短時間の粗挽き処理で、食材の形をある程度残しながら柔らかく。肉類は繊維を断ち切るように数回に分けて処理すると食べやすくなります。
レベル4(かまなくてよい):
中程度の時間で滑らかにし、とろみ剤を加えてまとまりを持たせます。野菜と肉を別々に処理して最後に合わせると見た目も良くなります。
レベル5(飲み込むだけ):
完全にペースト状にし、とろみ剤でしっかり粘度調整。この段階では一度処理した後、裏ごしをすると口当たりが格段に向上します。
時短テクニック
介護の合間の調理時間を短縮するコツとして、週末にフードプロセッサーを使って基本食材(茹でた野菜、肉類など)を下処理し、小分けにして冷凍保存する方法が効果的です。厚生労働省の「在宅介護実態調査」によれば、こうした時短テクニックを取り入れることで、1日あたりの調理時間が平均40%削減できるとの結果が出ています。

介護食作りの負担を減らすには、適切な調理器具の選択と効率的な使い方の習得が不可欠です。フードプロセッサーは初期投資が必要ですが、長期的に見れば介護者の時間と労力を大きく節約してくれる頼もしい味方になります。
とろみ剤の種類と正しい使い方
とろみ剤の種類と正しい使い方
嚥下機能が低下した方にとって、とろみ剤は誤嚥を防ぐ重要なアイテムです。適切なとろみ付けにより、飲み込みやすさが格段に向上します。
とろみ剤の主な種類
とろみ剤は大きく分けて2種類あります:
- でんぷん系:米やとうもろこし由来のでんぷんを使用。比較的安価ですが、時間経過で粘度が変化しやすい特徴があります。
- グアーガム系:植物由来の多糖類を使用。粘度の安定性が高く、透明感があります。冷たい飲み物にも溶けやすいのが特徴です。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の調査によると、施設での使用率はグアーガム系が約65%と主流になっています。これは粘度の安定性が評価されているためです。
とろみの正しいつけ方
とろみの付け方は3段階に分けられます:
段階 | 特徴 | 適応 |
---|---|---|
薄いとろみ | ストローで吸える程度 | 軽度の嚥下障害 |
中間のとろみ | フォークの背から流れ落ちる程度 | 中等度の嚥下障害 |
濃いとろみ | スプーンで山盛りにできる程度 | 重度の嚥下障害 |
使用方法のポイントは:
1. 必ず計量スプーンを使用し、正確な量を測る
2. 液体に少しずつ振り入れながら混ぜる(ダマになりやすいため)
3. 30秒〜1分程度待ち、粘度が安定してから提供する
とろみ剤を使う際の注意点
とろみ剤の使用には注意点もあります。国立長寿医療研究センターの報告によると、過剰なとろみ付けは水分摂取量の減少を招き、脱水リスクが1.4倍になるとされています。

また、飲み物の種類によって必要なとろみ剤の量は異なります。例えば、果汁飲料や酸性の強い飲み物はとろみが付きにくく、牛乳などのタンパク質を含む飲み物はとろみが付きやすい傾向があります。
専門の栄養士によると、個人の嚥下状態に合わせたとろみの調整が最も重要で、定期的な嚥下機能評価と併せて適切な粘度を見直すことが推奨されています。
介護食作りを効率化する便利な専門調理器具
多機能フードプロセッサーの活用
介護食作りに欠かせない調理器具の筆頭は、多機能フードプロセッサーです。市場調査によると、介護者の約68%が時間短縮のために専用調理器具を活用しているという結果が出ています。特に注目したいのは、刻み・すりつぶし・ミキシングなど複数の機能を一台で担う多機能タイプです。
「毎日の介護食作りが1時間以上短縮できました」と語るのは、要介護3の母親の食事を担当する田中さん(59歳)。「細かい刻み作業が手作業だと30分かかっていたものが、5分程度で完了するようになりました」と効率化の実感を語ります。
とろみ調整に便利な専用器具
嚥下食作りで重要なとろみ調整には、専用の計量カップやとろみ剤ディスペンサーが便利です。適切なとろみの強さは安全な食事摂取に直結するため、正確な計量が欠かせません。
とろみ測定器(LST値測定器)は、プロ仕様ですが介護施設での使用率が95%を超える必須アイテムです。在宅介護でも手頃な簡易版が登場し、誤嚥リスクの低減に貢献しています。
時短と安全を両立する専門器具
• 電動裏ごし器:手動より約4倍速く、均一な食感の裏ごしが可能
• ブレンダースティック:少量の介護食作りに最適で洗浄も簡単
• 温度計付き調理器具:適温管理で食中毒リスクを軽減(特に夏場は65℃以上の温度管理が重要)
• シリコン製の食品成形器:見た目の良い介護食作りをサポート
介護食専門調理器具は初期投資が必要ですが、長期的には介護者の労力軽減と時間効率の向上に大きく貢献します。国立長寿医療研究センターの調査では、適切な調理器具の活用により介護者の身体的負担が平均40%軽減されるというデータもあります。
介護食・嚥下食作りは毎日の作業であるからこそ、効率化と質の向上を両立できる専門器具への投資は、介護する側・される側双方の生活の質を高める重要な選択といえるでしょう。体力や時間に限りがある中で、安全でおいしい食事を継続的に提供するための強い味方となります。
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