高額介護サービス費とは?負担の上限を知って介護費用を軽減しよう
介護サービスを利用していると、毎月の支払いが家計を圧迫し、「このまま続けられるだろうか」と不安になることがあります。実は、介護保険には負担を軽減するための「高額介護サービス費制度」があります。この制度を知らないために、返還されるはずのお金を受け取れていない方が多くいらっしゃいます。佐藤さん(仮名・52歳)も、母親の介護費用に月7万円以上かかっていましたが、この制度を活用したところ、毎月2万円以上が払い戻されるようになりました。
高額介護サービス費制度の基本的な仕組み
高額介護サービス費制度とは、1ヶ月の介護サービス利用者負担額(原則1割、所得によっては2割または3割)が一定の上限を超えた場合、その超えた分が後日払い戻される仕組みです。2021年8月の厚生労働省の調査によると、制度対象者の約15%が申請していないという結果も出ており、知らないことで損をしている方が少なくありません。
所得区分別の負担上限額

負担の上限額は所得に応じて設定されています。主な区分は以下の通りです:
– 現役並み所得者:44,400円
– 一般世帯:44,400円
– 市町村民税世帯非課税等:24,600円
– 前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の方等:15,000円
– 生活保護受給者等:15,000円
例えば、一般世帯で月の介護サービス利用料が60,000円かかった場合、上限額44,400円を超えた15,600円が後日払い戻されることになります。
特に注目すべきは、同じ世帯内に複数の介護サービス利用者がいる場合は、世帯合算して上限額が適用される点です。これにより、夫婦で介護サービスを利用している場合などは、さらに負担軽減の恩恵を受けられる可能性があります。
高額介護サービス費は自動的に支給されるわけではなく、初回は申請が必要です。「面倒だから」と申請を先延ばしにすると、最大でも過去1年分しか遡って請求できないため、早めの対応が大切です。次のセクションでは、具体的な申請手続きの方法と必要書類について詳しく解説します。
高額介護サービス費の払い戻し制度の仕組みと対象者
高額介護サービス費の基本的な仕組み

高額介護サービス費制度は、介護保険サービスの利用者負担が一定額を超えた場合に、超えた分が払い戻される仕組みです。この制度は、経済的負担を軽減することで必要な介護サービスを受けやすくするためのセーフティネットとして機能しています。
厚生労働省の統計によると、2021年度には約250万人がこの制度を利用し、平均して月額約8,000円の払い戻しを受けています。特に複数のサービスを利用している方や、短期入所(ショートステイ)を頻繁に利用している方にとって大きな助けとなっています。
対象となる方の条件
この制度の対象者は、以下の条件に該当する方です:
– 介護保険サービスを利用している被保険者(第1号・第2号)
– 同じ月内の利用者負担額が自己負担上限額を超えた方
– 指定された期間内に申請手続きを行った方
重要なのは、同じ世帯内に複数の介護保険サービス利用者がいる場合、世帯合算も可能という点です。例えば、夫婦で介護サービスを利用している場合、個々の負担額は上限を超えていなくても、合算すると上限を超える場合に払い戻しの対象となります。
自己負担上限額の区分
自己負担上限額は所得に応じて5段階に分かれています:
– 現役並み所得者:44,400円
– 一般世帯:44,400円
– 市町村民税世帯非課税等:24,600円
– 前年の合計所得金額と公的年金収入額の合計が80万円以下:15,000円
– 生活保護受給者等:15,000円
例えば、一般的な年金生活をしている80歳の母親が、デイサービス、訪問介護、福祉用具レンタルを利用し、月の自己負担額が55,000円だった場合、上限額44,400円との差額10,600円が後日払い戻されることになります。

この払い戻し制度を知らずに介護費用の負担に悩んでいる方は少なくありません。実際、当事務所で相談を受けた佐藤さん(仮名・67歳)は、この制度を知ったことで年間約12万円の負担軽減につながりました。
所得区分別の負担上限額と具体的な還付金額の計算方法
所得区分ごとの自己負担上限額
高額介護サービス費の制度では、利用者の所得に応じて毎月の自己負担上限額が設定されています。この上限を超えた分が後日払い戻しされる仕組みです。
| 所得区分 | 自己負担上限額(月額) |
|---|---|
| 生活保護受給者 | 15,000円 |
| 市町村民税非課税世帯(年金収入80万円以下) | 15,000円 |
| 市町村民税非課税世帯(年金収入80万円超) | 24,600円 |
| 市町村民税課税世帯(一般) | 44,400円 |
| 市町村民税課税世帯(現役並み所得者) | 93,000円 |
払い戻し額の具体的な計算例
例えば、市町村民税課税世帯(一般)の佐藤さん(75歳)が、ある月に次のサービスを利用した場合を考えてみましょう:
– デイサービス(3回):10,000円(自己負担)
– 訪問介護(週2回):12,000円(自己負担)
– ショートステイ(5日間):25,000円(自己負担)
– 合計自己負担額:47,000円
この場合、上限額44,400円を2,600円超過しています。この超過分が高額介護サービス費として払い戻しの対象となります。
世帯合算制度の活用方法
同じ世帯に複数の介護サービス利用者がいる場合、世帯合算の制度を活用できます。例えば、夫婦二人が介護サービスを利用している場合:
– 夫の自己負担額:30,000円
– 妻の自己負担額:25,000円
– 世帯合計:55,000円

一般世帯の上限額44,400円を適用すると、55,000円-44,400円=10,600円が払い戻しされます。
また、医療費の高額療養費制度との合算制度「高額医療・高額介護合算制度」も年間の負担軽減に役立ちます。介護と医療の自己負担額が高額になる場合、この制度の申請も検討しましょう。上限額を理解し、適切に申請手続きを行うことで、介護費用の負担を効果的に軽減できます。
高額介護サービス費の申請手続き完全ガイド—必要書類から申請先まで
申請方法の基本と流れ
高額介護サービス費の申請は思ったより簡単です。基本的な流れは、①サービス利用後に自己負担額が上限を超えたことを確認 ②必要書類を準備 ③市区町村の介護保険窓口へ申請 ④審査後に指定口座へ払い戻し、となります。申請期限は、サービス利用月の翌月から2年以内ですが、早めの申請をお勧めします。
必要書類と準備のポイント
申請には以下の書類が必要です:
– 高額介護サービス費支給申請書(市区町村の窓口やウェブサイトで入手可能)
– 介護サービス提供事業者からの領収書
– 振込先口座情報(通帳やキャッシュカードのコピー)
– 印鑑
– 本人確認書類(申請者が本人以外の場合)
実務ポイント:領収書は原本ではなくコピーでも受け付けられる自治体が多いですが、事前に確認しておくと安心です。また、一度申請すると2回目以降は自動的に払い戻される「自動償還方式」を採用している自治体も増えています。東京都内の調査では約80%の自治体が自動償還を導入しており、初回申請の手間だけで済む場合が多いです。
申請先と相談窓口
申請先は居住地の市区町村役場の介護保険担当窓口です。不明点があれば、同じ窓口で相談できます。地域包括支援センターでも相談可能です。介護保険証に記載されている「保険者」が申請先となります。
よくある申請時の疑問と解決策
「上限額を超えているか分からない」という疑問には、事前に窓口で確認するか、介護サービス事業者に相談するのが確実です。「書類の書き方が分からない」場合は、記入例を参考にするか、窓口で記入指導を受けられます。厚生労働省の調査によると、申請可能なのに申請していない世帯が約15%存在するというデータもあり、制度を知らないために損をしている方も少なくありません。申請は権利ですので、積極的に活用しましょう。
申請後の流れと併用できる他の介護費用軽減制度
申請から支給までの流れ

高額介護サービス費の申請を行った後は、審査を経て約2〜3ヶ月後に指定口座へ払い戻しが行われます。申請月によって多少前後することがありますが、市区町村によって処理スピードが異なるため、事前に担当窓口に確認しておくとよいでしょう。
支給決定後は「支給決定通知書」が送付されます。この通知書には支給額や計算根拠が記載されていますので、内容を確認し、不明点があれば速やかに問い合わせることをおすすめします。
併用できる他の介護費用軽減制度
高額介護サービス費制度は、他の軽減制度と併用することでさらに負担を抑えることができます。
1. 高額医療・高額介護合算制度
医療と介護の両方のサービスを利用している場合、年間(8月〜翌年7月)の自己負担額を合算し、限度額を超えた分が払い戻される制度です。厚生労働省の統計によると、この制度を活用することで年間平均約5万円の負担軽減が実現している世帯もあります。
2. 社会福祉法人等による利用者負担軽減制度
市町村民税非課税世帯などを対象に、社会福祉法人が提供する介護サービスの自己負担額が原則25%軽減されます。全国で約10万人がこの制度を利用しているとされています。
3. 生計困難者に対する利用者負担額軽減制度
特に生計が困難な方に対して、介護サービスの利用者負担額や食費・居住費を軽減する制度です。
事例:Aさん(75歳)の場合
要介護3のAさんは、デイサービスとショートステイを利用し、月額の介護費用が5万円かかっていました。高額介護サービス費制度を利用したことで月額上限の2.4万円までの負担となり、さらに社会福祉法人による軽減制度も併用して年間約36万円の負担軽減が実現しました。
これらの制度は申請が必要なものがほとんどです。「知らなかった」という理由で受けられる支援を逃さないよう、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、自分の状況に合った制度を積極的に活用しましょう。

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